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日本代表最終戦
【2003年10月28日】

昨日、ラグビーW杯の日本代表最終戦がセントラル・コーストのゴスフォードで行われた。ゴスフォードは、シドニーの北約80キロに位置し、車で約1時間余り。風光明媚なセントラル・コーストの玄関口にあたり、手ごろなリゾート地としてシドニーっ子に人気だが、シドニー中心部のセントラル駅まで電車でアクセスできるため、シドニーの通勤圏でもある。

セントラル・コースト・スタジアムは、スタンドから海が見える、というのが、何ともオーストラリアらしい。これまでの3試合を戦ったタウンズビルのデイリー・ファーマーズ・スタジアムよりは一回り小さい会場だが、昨夜の観客数は19,653人と、ほぼ満員に近い数字。今回のワールドカップ100万人目の観客も、昨夜このスタジアムのゲートをくぐった。

日本vsアメリカ 相手はアメリカ代表。たとえ、この試合に勝ったとしても、日本の1次リーグ敗退は決定済み、と分かっていながら、日本からはるばる応援に来たラグビー・ファンだけでなく、シドニー近辺の日本人の多くが平日にも関わらず、会場に足を運んだ。その熱狂的な応援ぶりは、2000年のシドニー・オリンピックを彷彿とさせた。あれほど多くの日の丸を一度に見たのは、ヤワラちゃんが金メダルを決めた試合以来のことだ。

ARU (Australian Rugby Union)は、ワールドカップを盛り上げるために、地元オーストラリアだけでなく、もう1ヵ国応援しよう!という趣旨の"Adopt A Second Team"キャンペーンを繰り広げている。タウンズビルの場合は、地元で行われるすべての試合が日本代表戦だったために、日本を応援する観客が多かったのは分かるのだが、フシギなことに、昨夜の試合でも応援は圧倒的に日本寄り。日の丸を大きく顔に描いている人や、「必勝」「神風」なんて書かれた鉢巻をしめている人はザラで、相撲の格好をしていたり、サムライ頭のカツラをかぶっていたり、と、思わず「それ、どこで手に入れたの〜?」と聞きたくなるようなジャパン・グッズ(?)を身につけている人続出……。

試合の方は、前半8分、11分と続けざまにトライを決められ、一方的な展開になるのかという危惧で始まったが、前半は何とか10対20まで反撃して折り返し。後半は1点差まで迫り、スタンドを大いに沸かせる逆転につながりそうな見せ場もあったものの、結果は26対39。アメリカ代表チームが、ワールドカップを舞台に39点取ったのも、5トライあげたのも、13点差をつけて勝ったのも、すべて最高記録だそうだ。

日本vsアメリカ そんなわけで、日本は1995年、1999年に引き続き、今大会も白星なしで、ワールドカップから姿を消した。スコットランド、フランス、フィジーと戦った最初の3試合はともかく、アメリカ戦では日本の勝利シーンを生で見られる可能性大だと思っていただけに、チャンスを結果に結び付けられなかったのは残念無念……。

それでも、「ジャパンはよくやったよ!」という評価がオーストラリア人共通の見解だ。8年前、ニュージーランド相手に17対145で無残に敗れた試合を南アフリカで見たときは、大人同士の試合とは思えず、観戦しているのがツラくなってくるほどだった(あのときは観客のほとんどが日本を応援してたっけ……)が、当時に比べるとスクラムやタックルなど体を張ったプレーは格段によくなっている。リードされたときに、ずるずると崩れることがなくなったのも大いなる進歩。スコットランド戦、フランス戦は、ホントにいい試合で、「もしかして」という夢を見せてもくれた。

ただ、どんなに観客の心に残るいい試合をしたとしても、記録には残らない。「大健闘、でも全敗」という今回の結果を踏まえて、4年後の大会で攻撃力をアップしたジャパンを見てみたいものだ。

ラグビーW杯の1次リーグは11月2日に全日程を終える。開催国のオーストラリアは、アイルランドと並び14ポイントを獲得してA組1位(本日現在)で、残りの試合の結果を待たず、決勝トーナメント進出が決定済み。他グループでは、B組がフランス、C組イングランド、D組ニュージーランドと前評判の高いチームが順当にトップを守っている。決勝トーナメントが始まるのは、11月8日から。準々決勝や3位決定戦のチケットはまだ手に入る(2003年10月28日現在)ので、この時期オーストラリアに滞在する人は、世界のトップレベルの試合を観戦して、ラグビーの醍醐味を味わってはいかがだろうか?

(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)

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