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オリンピックまで1年
【1999年10月】

シドニーオリンピックまで、いよいよあと1年となった。2000年9月15日の開会式を皮切りに、出場予定国は200か国以上、参加選手は1万人を超える一大イヴェントが、17日間にわたって繰り広げられる。

急ピッチで化粧直しが進むシドニーでは、ホテルや空港、観光エリアをはじめとして、さまざまな建築・改修作業や大型プロジェクトが進められている。
 
公衆電話やバスの停留所、ニュース・スタンドなども新しくなり、道路や公園、文化施設にいたるまで工事、工事のオンパレードだ。どこも渋滞でうんざりだが、街がきれいになるのだから歓迎すべきことなのだろう。
 
メイン会場となるホームブッシュベイは、わが家から車で約10分のところにある。友人や知人が来るたびに案内したり、取材で何度も足を運んだりしているうちに、なんとなく愛着がわいてきた。
 
少しずつ完成していく様子を間近で見ていたせいだろうか。

はじめの頃は、既存の施設以外には更地とブルドーザーばかりが目立ち、「2000年に間に合うのかなあ……」と本気で心配した。1988年の建国200年に合わせてできたショッピング・コンプレックスは、何とか表側だけはオープニングセレモニーに間に合わせたが、裏はまだ工事中だった、というエピソードも残っているくらいのんびりしたお国柄のオーストラリアなのだ。が、さすがにオリンピック施設は最近になって続々とできあがってきた。

開会式などのイベントが行なわれる「スタジアム・オーストラリア」は今年はじめに無事完成している。すでにラグビーの試合やコンサートなども行なわれているが、先日公式オープンとなった際にさっそく出かけてみた。
 
スタジアム内は広く明るく、太陽の光が十分に差し込む屋根をはじめ、さまざまな方法で自然光を最大限活用する設計になっている。
 
日陰をつくって観客を保護する「屋根つき」スタジアムは世界でもあまり例がないらしい。日差しが強いオーストラリアらしいアイデアだ。屋根の上に落ちる雨水は、タンクに集められ給水に利用されるので、節水にも重要な役割を果たす。また、自然換気によって電力消費量も大幅に削減されるという。
 
シドニーオリンピックは環境重視を大きなテーマの一つとして掲げているため、「公害防止、省資源、種の保存」を重視して会場の建設が進められている。
 
オープニングセレモニーでは式典に続いて、オーストラリア代表対世界選抜のサッカーの試合が行なわれた。結果は3対1と快勝して大いに盛りあがったが、五輪史上最大の収容人数11万人を誇る会場はさすがに広すぎて満席にはならなかった。
 
過剰接待や招致疑惑などオリンピックに対するマイナス面の報道が続く中、イメージ回復をねらって、人気スポーツ選手を起用した大々的な国内一般用チケット販売キャンペーンも行なわれた。すでに受付は締め切られたが、チケットを受け取るまで約 1年かかるという気の長い話だ。
 
国際的な大イベントだけに、警備の問題や混雑時の対応策など問題は山積しているが、オージー(オーストラリア人)の間にはいつもの楽観論が漂っている。
 
さて、どんなオリンピックになることやら……?

(月刊「清流」掲載)

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