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オーストラリアの検疫最新事情
【2003年2月25日】

オーストラリアでは、昨年、IQI(Increased Quarantine Intervention)と呼ばれる検疫強化策が各地の国際空港で順次導入され、入国時の検疫、特に食品の持ち込みに関するチェックがこれまで以上に厳しくなった。

「申告しなかったけど、問題なく持ち込めた」とか「スーツケースに隠して持ち込めばOK」なんていう無責任な情報やアドバイスも、相変わらず飛び交っているが、それはもう過去の話。実際、無申告で食品や薬を持ち込もうとして見つかり、トラブルとなるケースがこのところ頻発している。

これは、以前からのAQIS(オーストラリア検疫サービス)検疫官による手作業での荷物チェックに加えて、有能な検疫物探知犬や最新のX線装置を使った二重三重の検査が徹底して行われるようになったため。例えば、シドニー空港では、昨年4月のIQI導入の際、1,000万ドルかけて検疫システムを拡充し、検疫官は300%増の440人、探知犬は全16チーム編成となった。X線装置はそれまでの約5倍にあたる全24台を配備している。

誤解のないように念のため断っておくと、申告さえすれば、堂々と持ち込める食品はたくさんある。わたしも、一時帰国するたびに、日本から食品をたっぷり持ってくるが、検疫にひっかかって没収されては元も子もないので、原材料名は細かくチェックしている。そもそも検疫の目的は、オーストラリアの動植物や人々の健康、環境に影響を及ぼす可能性のある害虫や病原体の侵入を防ぐこと。ダメというものには、それぞれ理由があるのだ。

AQISでは、啓発活動の一環として、入国者にさまざまな質問をすることにより、規制品を認識させたり、より多くの手荷物を開けて検査することを方針に掲げている。申告品があるなら、名前や原材料名くらいは英語で言えるようにしておきたい。AQISによる入国時の介入検査率は90%を超えており、実態は100%にかなり近くなっていると言われている。

先日、わたしがシドニー空港に到着した際も、「申告あり(赤)」に並んだ人は全員荷物を開けて、検疫官に申告物を見せるように指示され、「申告なし(緑)」の方では、すべての荷物がX線検査に通されていた。わたしは……といえば、もちろん「申告あり」に並んで、検疫官のチェックを受けたのだが、すべて持ち込みOKで、かかった時間は約3分。「申告あり」は時間がかかると思い込んでいる人がいるが、決してそんなことはない。今回も全部の荷物を開けずにすんだし、考えようによっては、「申告なし」で、すべての荷物を高性能X線に通すほうが厳しいような気もした。

検疫法に違反する人の多くは他国からの旅行者ということもあり、オーストラリアの国際空港では、"on-the-spot fines"(=その場で科される罰金)制度が適用されている。「申告なし」としながら、持ち込み禁止品を隠しもっていた場合の罰金は通常$220〜で、キツーいお叱りのことば付き。さらに、重大な違反の場合には起訴され、個人であれば6万ドル以下の罰金あるいは、10年以下の懲役が科される可能性もある。せっかくの楽しい旅行を台無しにしないためにも、検疫では正しい申告を心がけよう!

<参考>最近の検疫法違反のケース

●植物、コケ、キノコ類、種子などの申告を怠ったフランス人植物学者⇒$4,000以上の罰金

●白ネギやショウガ、レタスなど野菜の申告を怠った日本人旅行者⇒$5,000以上の罰金

●ナツメヤシの実、リンゴ、キュウリ、マンゴ、フェタチーズ、ナッツ類などの申告を怠ったオーストラリア人旅行者⇒$6,000以上の罰金

●乾燥豚肉1袋の申告を怠ったオーストラリア人ビジネスマン⇒$12,800以上の罰金

申告が義務付けられている製品

★日本人が持ち込みやすい危険性の高い、要注意製品(PDF形式)

(「地球の歩き方」ホームページ・シドニー特派員レポート掲載)